戦後朝鮮人の送還について 6



上原都「前回までは南部朝鮮への計画送還を見てみたけど、今回はまず北部朝鮮への送還について触れるわね」

神楽「北部朝鮮って北朝鮮のことか?」

上原都「現在の北朝鮮に相当する地域ね。北緯38度以北の朝鮮は終戦以降進駐してきたソ連軍の支配下に置かれ、その地域からの日本人引揚についての協定は締結されず、その地域への直接的な朝鮮人送還も行われなかったの」

綿貫響「日本人が、満洲に侵攻し朝鮮に迫るソ連軍から必死に逃げて帰ってきたって話は聞くわね」

白鳥鈴音「話題になったヨーコ話だね」

上原都「1946年3月18日の送還希望登録以降の計画送還でも、北部朝鮮への送還は延期されることになったの」

SCAPIN829 Suspension of Repatriation from Japan of Korean Residing in Northern Korea 北部朝鮮居住の朝鮮人の日本からの出国停止

2.The Imperial Japanese Government upon receipt of this memorandum will:
  a.Suspend repatriation from Japan of Koreans whose destination in Korea is north of the 38 degree parallel of north latitude.
  b.Keep this suspension in effect until further notification.

2.日本政府はこの覚書を受け取り、
  a.北緯38度線以北の朝鮮を目的地とする朝鮮人の日本からの送還を停止すること
  b.更なる通知が出るまで、この中止を有効なものとして維持すること

神楽「で、『更なる指示』っていつ出たんだ?」

上原都「1946年12月19日に、GHQと対日理事会ソ連代表との間に、ソ連及びソ連の支配下地域からの日本人引揚と、北緯38度以北の朝鮮への朝鮮人送還についての協定が締結されたの。それに従って送還・引揚を行うようSCAPINが出たわ」

SCAPIN1421 Repatriation of Japanese Nationals from Soviet and SovietControlled Territories, and of Koreans from Japan to Korea North of 38°North Latitude ソビエト及びソビエト支配下地域からの日本人引揚、及び日本から北緯38度以北の朝鮮への朝鮮人送還

白鳥鈴音「どれぐらいの人が送還されたのかな?」

上原都「引揚援護庁の編纂した「引揚援護の記録」によれば、3月18日に北部朝鮮への送還希望を登録したのは9,071人だけど、SCAPIN1421発出後の再調査では送還希望者は1,413人になっていたの。実際の送還については、まずこのSCAPINを見て」

SCAPIN1553 Repatriation of Koreans from Japan to Korea North of 38°North Latitude 日本から北緯38度以北の朝鮮への朝鮮人の送還

2.The ship Taian Maru has been designated to lift the Koreans mentioned in paragraph 2 b of reference paragraph 1 b above. The ship will depart from Sasebo on or about 15 March 1947.

2.上記パラグラフ1bの参照のパラグラフ1bで言及された朝鮮人の輸送に大安丸を指定する。1947年3月15日前後に佐世保を出発すること

上原都「厚生省援護局編集の『引揚げと援護三十年の歩み』によれば、このとき送還された朝鮮人は233人となっているわね」

綿貫響「たったそれだけなの?」

上原都「SCAPIN1680によって送還の打ち切りを指示し、1734によって最終の送還を指示するの」

SCAPIN1680 Repatriation of Korean from Japan to Korea North 38゜North Latitude 日本から北緯38度以北の朝鮮への送還

3.Concerning Koreans mentioned in paragraph 2 above, the Imperial Japanese Government will:
  a.Notify them that this is their last chance for repatriation until such time as commercial facilities are available.

3.上記パラグラフ2で言及された朝鮮人に関して、日本政府は
  a.これが商業交通が利用できるようになるまで送還の最後の機会であることを彼らに周知すること

SCAPIN1734 Repatriation of Koreans from Japan to Korea North 38゜North Latitude 日本から北緯38度以北の朝鮮への朝鮮人の送還

2.The ship Shinyo Maru has been designated to lift the Koreans mentioned in reference paragraph 1 b above. The ship will follow the schedule given below:
  25 June 1947 - Sail from Sasebo to Moji with Korean repatriates.
  26 June 1947 - Load baggage and personal possesions of abovementioned repatriates, and sail for Konan Korea.

2.信洋丸は上記パラグラフ1bの参照で言及された朝鮮人を輸送するよう指定されている。下に与えられたスケジュールに従うこと
  1947年6月25日−朝鮮人送還者を載せて佐世保を出航し門司に行くこと
  1947年6月26日−朝鮮人送還者の荷物と個人所有物を載せて、朝鮮の興南に向かうこと

上原都「これも『引揚げと援護三十年の歩み』によれば118人が送還されたようね。つまり合計351人」

神楽「極端 に少ないなぁ」

上原都「で、SCAPIN927/16で北緯38度以北の朝鮮への送還が終了したことを宣言してオシマイね」

SCAPIN927/16 Repatriation 送還

Repatriation of Koreans from Japan to Korea north 38°north latitude was completed 26 June 1947.

日本から北緯38度以北の朝鮮への朝鮮人の送還は1947年6月26日に完了した

綿貫響「たった2回の送還でたった351人?どうしてそんなに少ないの?再調査の時点でも送還希望者は1,413人に減っているけど、少なすぎない?」

上原都「そうねぇ。どんな理由があったかまではどうとも言えないわね。これで終戦直後からの朝鮮人の計画送還について触れるのは終了するんだけど、最後にこのSCAPINをあげておくわ」

SCAPIN2130 Repatriation of Non-Japanese 非日本人の送還

2.Reference is made to Memorandum for the Japanese Government, AG 370.05 (7 May 46)GC-0, SCAPIN 927/17, subject: Repatriation, 9 March 1949.

3.All provisions in referenced memorandum pertaining to voluntary repatriation of non-Japanese nationals are rescinded.

4.Effective this date voluntary repatriation of non-Japanese nationals will be the responsibility of the individual.

2.参照は1949年3月9日付SCAPIN927/17「送還」

3.参照された覚書の非日本国民の自主的引揚に関連する全ての条項を取り消す

4.この日より非日本国民の自主的引揚は個人の責任とする

上原都「このSCAPINが出た1950年11月9日以降、連合軍の構成員あるいは連合国民ではない非日本人の帰国については、日本政府の責任によるものではなく、個人の責任によるものとなるの。つまり日本政府による送還はオシマイっと」

白鳥鈴音「長くやってきたから、少しまとめないと頭がこんがらがっちゃうよ」

上原都「オッケー、書籍やネット上で見られる言説に対して端的に要点だけ言うわね」

・日本政府は日本人の引揚に熱中し、朝鮮人の送還を積極的に行わなかったため、朝鮮人たちは混乱の中自主帰国をした。
→日本政府の統制や待機要請に従わず朝鮮人が港に殺到したことによって混乱が起きた。政府は1位復員軍人軍属、2位集団移入労務者、3位一般居住者と優先順位を定めた計画的な送還を実施している。
 1945年9月7日読売報知 応徴士から優先 内地在住半島人帰鮮計画決る
 1945年9月13日朝日(東京版) 関釜航路は大混雑
 SCAPIN139 朝鮮人が送還要求のため九州及び南本州の一定地域に入ることを制限管理するための措置を日本政府が開始するよう指令した電話の確認無線電信
 SCAPIN213 朝鮮人の日本からの送還
 CLO349 朝鮮人の送還

・持ち出せる現金や荷物が厳しく制限されていたため送還を躊躇した者が多い。
→927を見よ。日本人も同じ基準。のちには携行荷物の制限を緩めている
 SCAPIN927 送還 附則6
 SCAPIN927/5 送還
 SCAPIN927/9 送還

上原都「そうそう、計画送還終了後の話だからあげてなかったけど、1949年1月18日付SCAPIN1966で、事実上送還される韓国人の荷物重量規制は撤廃され、一人あたりの持ち出せる金額の上限も100,000円に改定されたわ」

SCAPIN1966 Property Individuals are Authorized to Carry on Entering and Leaving Japan 個人の日本入国及び出国時に携行を許可される財産

4.The Japanese Government will take up all Bank of Japan yen currencies from persons entering and leaving Japan as directed in paragraph 2c above, to be held in accordance with instructions herein. Special dispesition will be made of Japanese yen taken up from persons being repatriated from Japan to Korea and to the Ryukyu Islands as follows:
  a.The Japanese Government is directed issue a receipt promising payment in Japan to the Government of the Republic of Korea for Bank of Japan yen currency taken up from persons being repatriated from Japan to Korea in amounts not to exceed 100,000 yen per head of a family. The receipt will be issued to the person surrendering the currency who is authorized to carry the receipt on departure from Japan to the Government of the Republic of Korea for payment in local currencies.

4.日本政府は、上記パラグラフ2cに指示された日本に入国及び出国する者から全ての日本銀行円貨幣を取上げ、そこの指示に従って保管すること。日本から韓国及び琉球諸島に送還される者から取上げられる日本円は以下のとおり特別な処分を為される
  a.日本政府は、日本から韓国に送還される者から取上げた家族一人当たり総計100,000円を超えない日本円について、日本で大韓民国政府の支払を約束する受領証を発行することを指示される。受領証は、貨幣を引渡しており、日本からの出国時に大韓民国政府が現地貨幣で支払う受領証の携行を許可された者に発行される

18.In addition to articles which foreign nationals may carry on entering and leaving Japan as authorized in paragraph 16 above, Koreans, Formosans, Ryukyuans and Chinese who are eligible for repatriation from Japan to their homelands are authorized unaccompanied shipment of the following:
   a.Household articles except as specifically prohibited by this directive;
   b.Professional instruments not exceeding 4,000 pounds in weight, free and clear of all liens and encumbrances, and used in the operation of their trade or individually operated business in Japan. Any such property weighing in excess of 4,000 pounds may be removed from Japan only on the approval of the Supreme Commander for the Allied Powers. Disposition or storage for safekeeping of such property in excess of 4,000 pounds will be the sole responsibility of the individual repatriated.

18.上記パラグラフ16で許可された外国人が日本に入国及び出国時に持込及び持出せる物品に加えて、日本から本国への送還資格を有する韓国人、台湾人、琉球人は以下の別送品を許可される
   a.この指示で特に禁止されたものを除く家財
   b.重量4,000ポンドを超えないもので、一切の質権・抵当権が設定されておらず、日本での取引もしくは個人商売の活動に使用される専門器具。4,000ポンドを超えるあらゆるそのような財産は、連合軍最高司令官の承認のみによって日本から移動される。4,000ポンドを超えるそのような財産の預入或いは保管は、単に送還される個人の責任である

綿貫響「この時期は大韓民国が成立しているから『韓国』『韓国人』と訳しているのね」

上原都「そういうこと。もっとも日本政府が正式に成立を承認していたかは別問題だけど。で『引揚援護の記録 続(厚生省引揚援護局編 厚生省編集)』によると、このSCAPIN発出以降、自転車・ミシン・自動車部品だけでなく、オート三輪車・貨物自動車まで持込む韓国人送還者が出てきたので、所有者の乗船する送還船に積めなくなりそうになって困ったようね。結局、身廻品以外の荷物は正規の輸送料金を徴収して、別の輸送船に載せて輸送したようよ」

神楽「貨物自動車ってトラックのことだろ?すげーな」

上原都「さ、次のお題に行くわね。前回の最後で少し触れたけど、戦後の在日を構成する因子としては、1946年12月31日時点で送還希望登録による送還に従わなかった朝鮮人53万人を主として、そこから47年以降の送還者を引いて密航による流入者を足すことになるんだけど、密航者について見てゆくわ」

白鳥鈴音「あれ?47年以降の送還者数は?」

上原都「16,076人よ。詳しくは前回の最後にあげておいたを見ておいて」

綿貫響「密航者の存在自体については『昭和21年度密航朝鮮人取締について』で触れているわね」

上原都「ええ。1は1946年4月21日付のものだけど、事由を見て」

事由 最近朝鮮人にして密航し北九州及中国西部に上陸する者漸次増加し本年4月中に於て其の総数約1,000名に達し益々増加の傾向にあるばかりでなく密輸出入者も亦漸増しつゝあるを以て聯合軍の指示に従ひ関係県に於ては之が逮捕護送送還を行ひつゝあり 仍て此の経費を必要とする

神楽「4月だけで1,000人かぁ」

上原都「1946年6月12日付のCLO2823によれば、正確には判明しているだけでも1,567人もいたんだけどね」

CLO2823 Repatriation of Koreans 朝鮮人の送還

1.The number of Koreans who repatriate from Japan to Korea and again return to Japan by illegal means has greatly increased according to recent investigations. The figure for April 1946 is given on the attached list "A".

2.The Japanese police is endeavouring, with the assistance of the local Occupation Forces, to apprehend these Koreans at their landing places, and those who were thus arrested were mostly sent back to Korea by order of the local Allied authorities.

3.These are, however, many Koreans who escaped the vigilance of the local police and re-entered Japan. The Ministry of Home Affairs has complied a list of these Koreans (1,567 as of the end of May). as shown on the attached list "B". The names and addresses of these persons are in the hands of prefectural police officials. But it is assumed that there are many more Koreans who entered Japan illegally and whose names and present addresses are unknown.

1.最近の調査によると、日本から朝鮮に送還され、違法な手段で日本に再び戻ってくる朝鮮人が非常に増加している。1946年4月の数字は別表Aにある

2.日本警察は、地方占領軍の助力によってこれらの朝鮮人を上陸現場で逮捕しようと努力し、逮捕された彼らの大部分は地方連合軍官憲の命令に従って朝鮮に送り返されている

3.しかし、地方警察の警戒を逃れ再び日本に入国した多くの朝鮮人がいる。自治省は別表Bに示されるようにこれらの朝鮮人(5月末で1,567人)のリストアップの要求に応じた。これらの者の氏名及び住所は都道府県の警察の手中にある。しかし、不法に日本に入国した朝鮮人は多くいるものと推測され、それらの氏名と現住所は知られていない

上原都「で、その予算によって各地に沿岸監視哨戒所を設置して密入国の取締にあたったんだけど、これ以降も1ヶ月あたり約1,000人の朝鮮人が密入国してきたようね。SCAPINで初めて朝鮮人の密入国についてとりあげたのは、46年6月12日付のSCAPIN1015よ」

SCAPIN1015 Suppression of Illegal Enrty into Japan 日本への不法入国の阻止

1.Cholera has broken out in Korea and is rapidly reaching epidemic proportions. In view of the grave danger of the introduction of this disease into Japan by carriers transported from Korea to Japan on unauthorized shipping, positive steps must be taken to detect and apprehend ships illegally entering Japanese ports.

2.The Imperial Japanese Government will:
  a.Place into effect measures to detect ships illegally entering Japanese ports.
  b.Seize all such ships and sail them together with their crews, passengers and cargo to Senzaki, Sasebo or Maizuru, and deliver them to US military authorities at that port.
  c.Insure that no crew member or passenger of such vessels is allowed ashore while in Japanese custody.

1.コレラが朝鮮で発生し、速やかに流行するだろう。朝鮮から日本へ未許可の船舶で輸送される保菌者によって、日本にもたらされる重大な危険性から見て、不法に日本の港に入ってくる船を探知して逮捕する積極的な措置が執られなくてはならない

2.日本政府は、
  a.不法入国船の探知を実施すること
  b.そのような船を押収して、船員・乗客・貨物と共に仙崎、佐世保または舞鶴に回航し、米軍当局に届けること
  c.拘留中、そのような船の船員・乗客の上陸を許可しないよう確実に処置すること

神楽「コレラを持ち込まれたらたいへんだもんなぁ」

上原都「これは第4回でも取上げたけどね。日本政府はこれを受けて6月20日にはCLO3005を出して沿岸警備の計画を提出したの」

CLO3005 Suppression of Illegal Enrty into Japan 日本への不法入国の阻止

2.With a view to implementing reference a. Memorandum, the Ministry of Transportation has sent to the Directors of the Kyushu and Chugoku Maritime Bureaus and the Director of the Lighthouse Bureau the following instructions:
  a.They shall seize all ships illegally entering into Japan and bring them together with all crew, passengers and cargo to Senzaki, Sasebo or Maizuru and deliver them to the U.S. military authorities at the ports.
  b.The Director of the Kyushu Maritime Bureau shall organize the Special Coast Guard with three big tug boats "KAIRYU", "KAIHO" and "FUJI" and other suitable government or private-owned vessels.

2.参照aの覚書を実行するため、運輸省は九州及び中国海運局長、灯台局長に以下の指示を送った
  a.全ての日本への不法入国船舶を拿捕し、全ての船員、乗客及び貨物と共に仙崎、佐世保もしくは舞鶴に連行し、港の米軍官憲に引渡すこと
  b.九州海運局長は「かいりゅう」「かいほ」及び「ふじ」の3隻の大型曳船及び他の適切な政府もしくは私有船舶で特別沿岸警備隊を組織すること

綿貫響「タグボートって役に立つの?小さいし武装もないんでしょ?」

上原都「ええ。それで7月6日にはCLO3292を出して警備船舶に必要な武器弾薬や備品、旧海軍船艇の移管要求をしたわ」

CLO3293 Report on Suppression of Illegal Enrty into Japan 日本への不法入国の阻止の報告

3.In order to carry out the coast patrol effectively the Japanese Government wishes that the General Headquarteres, Supreme Commander for the Allied Powers, be good enough to supply the following arms and ammunitions to the above-mentioned patrol ships:
  a.One 7.7 mm machine gun with 1,000 rounds of ammunitions to each ship, totalling 12 machine guns and 12,000 rounds of ammunitions.
  b.Three pistols (with 30 rounds of ammunitions to one pistol) to each ship, totalling 36 pistols and 1,080 rounds of ammunitions. Such pistols are to be used by inspectors on board the patrol ship.

3.沿岸警備を効果的に実行するため、日本政府は連合軍最高司令官に、上記の警備船に対して以下の武器と弾薬を供給していただくよう要請する
  a.それぞれの船舶に7.7ミリ機関銃1丁と弾薬1,000発、合計機関銃12丁及び弾薬12,000発
  b.それぞれの船舶に拳銃3丁(1丁につき弾薬30発)、合計拳銃36丁及び弾薬1,080発。これらの拳銃は警備船に乗船する捜査官に使用される

5.To complete all programs as per the reference b. Memorandum, reinforcement of patrol ships is the most urgent subject to be taken up. In this respect the Japanese Government wishes that the small vessels together with necessary arms and ammunitions and search-lights as shown in the attached Annexes (A) and (B) be transferred from the Second Demobilization Bureau to the Ministry of Transportation. Those vessels were all built in haste during the War and having 8 mm steal side plate, they do not differ from ordinary merchant ships in any respect. There are no other vessels in Japan suitable for such service and have sufficient seaworthiness against the high seas in the area of Japan Sea west and north of Kyushu. In the event of such transfer of ex-naval craft being materialized, the Japanese Government will further request assistance or the General Headquarters in the following matters:
  a.Such ex-naval craft be granted a supply of 2,500 tons of diesel oil and 175 tons of lubricating oil for their monthly consumption.
  b.Members of U.S. Military Police be placed at such craft for which the local coast guard desires such help.

5.参照bの覚書に従って全ての計画を完了するため、警備船の強化は最も緊急の取上げられる主題である。この点で日本政府は、小型船舶に伴う必要な武器及び弾薬、付属する附則A及びBに示す探照灯を第2復員局から運輸省に移すことを要望する。これらの船舶は戦時中に急造され、8ミリ装甲を持つが、あらゆる点において通常の商船と変わらない。九州の西及び北区域の日本海の高波に対するじゅうぶんな耐久性を持った他の船舶は日本にない。旧海軍船舶の移送が実現した場合には日本政府は、以下の問題について最高司令官に更なる要請を行なう
  a.旧海軍船舶に毎月消費する2,500トンのディーゼル油及び175トンの潤滑油の補給を許可すること
  b.地方沿岸警備が援助を希望するため、それらの船舶に米軍憲兵を配置すること

上原都「武器弾薬の供給と旧海軍の海防艦引渡の要求については、
SCAPIN1735Aで「考慮中である」と回答されたけど、どうやら実現されなかったみたいね。終戦で日本は武装解除したんだから再武装はまずくない?って判断もあったみたい。そのため取締りもあまり効果を上げなかったみたいよ。ここらあたりについては次回でやるわね。あと46年12月10日にはこういうSCAPINも出ているわ」

SCAPIN1391 Suppression of Illegal Enrty into Japan 日本への不法入国の阻止

3.Since cholera is still prevalent in Korea, positive steps must be continued to detect and apprehend ships which are illegally transporting persons from Korea to Japan.

4.The Imperial Japanese Government will:
  a.Continue in effect measures to detect ships illegally entering Japanese ports.
  b.Seize all such ships and where possible sail them together with their crews, passengers and cargo to Sasebo or Maizuru and deliver them to United States military authorities at those ports.
  c.Place all Korean illegal immigrants apprehend in Japan in cholera quarantine and otherwise medically process them according to existing memoranda covering entrance of persons into Japan. Upon clearance by quarantine officials, transport them to the Sasebo Reception Center by rail.
  d.Outload Korean illegal immigrants from the Sasebo Reception Center on shipping designated for this purpose.
  e.Furnish Japanese police for guards aboard train and repatriation ships transporting Korean illegal immigrants.

3.朝鮮においてコレラが未だ流行しており、朝鮮から日本に不法な人員の輸送をしている船舶の探知と拿捕についての積極的な行動は継続されなくてはならない

4.日本政府は
  a.不法に日本の港に入る船舶を探知するための対策を継続すること
  b.全てのそのような船舶を捕らえ、乗員、乗客及び積載物と共に佐世保か舞鶴に回航し、米軍当局に引き渡すこと
  c.日本にいる逮捕された朝鮮人不法入国者を全てコレラ検疫所に収容すること、あるいは日本に入国する者についての既存の覚書による医学上処置を行なわなければならない検疫官の許可を得たのちにに、彼らを鉄道で佐世保引揚援護局に輸送すること
  d.朝鮮人不法入国者は、この目的のために指定された船舶で佐世保引揚援護局から送還されること
  e.朝鮮人不法入国者を輸送する列車と本国送還船舶への添乗警備に日本警察官を提供すること

上原都「逮捕された朝鮮人密入国者は普通の計画送還者と同じ正規の検疫を受けた後、送還船で朝鮮へ強制退去させられて第8軍の裁判を受けたわ。但しGHQの統計資料局(1950年から民間史料局)編纂の『History of the nonmilitary activities of the occupation of Japan 1945-1951 vol.16 Treatment of Foreign Nationals(日本語版は『GHQ日本占領史16 外国人の取扱い』)』によると、あまりにも逮捕者が多すぎて監獄がパンクしそうになったので、46年8月以降は密航者は裁判にかけず、乗組員、操船者、船主だけを裁判にかけることにしたようね」

白鳥鈴音「それじゃぁ密航常習犯が出るよね」

上原都「上の本だと15回も密航を企図した朝鮮人もいたと書いているわね。再密航を防ぐためにこういうSCAPINも出たわ」

SCAPIN1391/1 Suppression of Illegal Enrty into Japan 日本への不法入国の阻止

2.Paragraph 4 of the reference, paragraph 1 a above, is amended by addition of the following.
  Sub-paragraph f. Limit the baggage of Korean illegal immigrants being returned to Korea south of 38゜north latitude to such baggage as is necessary for their personal use to prevent subject illegal immigrants from becoming public charges upon their return to Korea south of 38゜ notrh latitude. Such baggage will be limited to the amount each such Korean car carry at one time.
  Sub-paragraph g. Take such steps as are deemed appropriate to assure that no Korean illegal immigrants have in their possession upon their return to Korea south of 38゜ north latitude, either alien registration cards and ration cards of the type issued by the Japanese Government or any falsified official papers and credentials, such as falsified travel orders, which might facilitate illegal entry of Koreans into Japan.
  Sub-paragraph h. Continue to apply the provisions of paragraph 3a(2), 3b and, Annex to the reference paragraph 1b above insofar as these paragraphs apply to Koreans being repatriated from Japan to Korea south of 38゜north latitude, to Korean illegal immigrants being returned to Korea south of 38゜north latitude.

2.パラグラフ1aの参照SCAPIN1391のパラグラフ4に以下を追加し修正する
  サブパラグラフf:北緯38度以南の朝鮮に帰される朝鮮人不法入国者が北緯38度以南の朝鮮に送還後生活保護者になるのを防ぐため、彼らの荷物を個人的に利用するのに必要な程度に制限すること。荷物は朝鮮の車で一回に運べる量に制限する
  サブパラグラフg:朝鮮人不法入国者を北緯38度以南の朝鮮に送還するさい、日本政府によって発行された外国人登録証と配給証、偽造された身分証明書、偽造された旅行命令のような証明書は、朝鮮人の日本への密入国を促進するかもしれないので、それを持たせないよう確実に処置するために適切であると考えられる手段を取ること
  サブパラグラフh:上記パラグラフ1bの参照の附則困離僖薀哀薀3a(2)、3b及び3dの条項への適用は、日本から北緯38度以南の朝鮮に送還される朝鮮人と北緯38度以南の朝鮮に送還される朝鮮人不法入国者にこれらを適用する限り継続する

綿貫響「携行品の制限、配給証や偽造の証明書を取上げろか」

上原都「コレラの終息以降は日本での経済的成功や離れ離れになった家族との再会、上級教育機関への進学、密輸といった目的の密航が主になったようよ」

神楽「どれぐらいの密入国者が逮捕されたのかなぁ?」

上原都「これも『History of the nonmilitary activities of the occupation of Japan 1945-1951 vol.16 Treatment of Foreign Nationals』によれば、46年6月から12月の間の逮捕者は以下のとおり」

month Koreans Formosan Chinese Okinawan Total
6 1,344 0 0 0 1,344
7 9,580 14 0 0 9,594
8 7.990 36 1 14 8,041
9 501 3 1 0 505
10 254 15 0 26 295
11 193 146 27 40 406
12 179 14 6 0 199
  20,041 228 35 80 20,384

神楽「半年間で2万人か。多いと考えていいのかな?」

白鳥鈴音「台湾人や中国人に比べれば雲泥の差だよね。ま、朝鮮は近いから密航しやすいんだろうけど」

綿貫響「これは逮捕された人数だから、密入国に成功した人間もいるのよねぇ」

上原都「日本政府は8月にも密航取締の追加予算を計上しているわ。それが『昭和21年度密航朝鮮人取締について」の
よ。これも事由を見て」

事由
密航朝鮮人の取締に関しては曩に本年四月頃の状況を基礎として差当り六ヶ月分の追加予算を計上して■■が其の後密入国者の数は逐月激増し七月中に於て既に一万名に達し八月中に於ては一万五千名を突破する見込である而も其の中には「コレラ」患者仝保菌者が相当数混入して居り又密貿易を企てる者が続出する等治安上乃至防疫上極めて憂慮すべき状態となって来たので北九州及中国の関係県をして緊急にこれらの取締を徹底強化させる必要がある仍ってこの経費を要する。

綿貫響「4月に計上した予算つまり1で取上げたものにさらに追加計上なのね」

神楽「『七月中に於て既に一万名に達し八月中に於ては一万五千名を突破する見込』か。上の表と一致しているな」

上原都「こういった全国的な指示だけでなく、大阪では9月にGHQ大阪軍政部が密航者の取締を指示しているわ。大阪府の『府参事会議案原議綴 昭和21年11月 自59号〜至64号』簿冊からみてゆくわね」

密入国朝鮮人送還の件(軍政部指令翻訳文)

軍政部指令翻訳文
 昭和21年9月5日
        経由 大阪連絡事務局長
 大阪府知事宛
   密入国朝鮮人送還の件

一、昭和21年9月5日付第1軍団よりの電話通告の指令に応じて朝鮮より内地に密入国したる現在大阪に在住する総ての朝鮮人を朝鮮に送還すべし

二、朝鮮より内地に密入国したる朝鮮人は警護のもとに佐世保に送るべし

        トウエイ中佐の命に依り
         副官 ピーバーデック



上原都「この指示に基づいて、大阪府警は9月18日付で各警察に通牒を送るの」

密入国朝鮮人送還に関する件 付:密入国朝鮮人送還実施要領

公親第831の126号
       昭和21年9月18日
           大阪府警察部長
各警察署長殿

密入国朝鮮人送還に関する件

終戦後日本内地に居住する朝鮮人の本国送還については聯合軍最高司令部の覚書に依つて本年3月18日迄日本に在住する凡ての朝鮮人に対して本国帰還の希望を調査し之を登録して本年5月16日以降計画輸送による帰国希望者の本国送還を実施し来たつたのであるが種々の事情に依り計画輸送に依る送還は全国的に成績振るはず当府に於ける成績も極めて不良で本年9月31日迄に10万2千2百62名の帰還希望者を送還すべき予定のところ9月15日現在における送還者は僅か3612名に過ぎぬ状況である。而も鮮内事情特に治安と食糧事情は極めて悪化してゐて生活の見透しが立たないのと、日本内地では闇によって豊かな生活が出来るといふ浅薄な考へから一旦帰国した朝鮮人が再び密航して日本内地に舞戻るといふが如き実情で最近に於ける密入国朝鮮人の数は全国で1ケ月約1万人を下らぬといふ状況であつて、この事は聯合軍最高司令部でも極めて重要視して本年6月20日日本政府宛に「日本への不法入国抑制に関する件」の覚書を発してその取締の強化を指令してをり又各府県に於ても不法入国抑止のため海上と沿岸地帯の警備を強化して密入国朝鮮人の発見検挙に努めて居るのであるが、厳重なる警戒網を潜つて密入国し各府県に上陸して潜入した朝鮮人の数は相当多数に上る見込みで現在大阪には約3千名以上の密入国者が潜入してゐるものと思はれる。更に終戦直後北海道及九州方面より朝鮮に引揚げるべく帰国証明書を持つて出発した鮮人労務者が帰国せずにその後内地に潜入して各地を浮浪する所謂無籍者が相当に有り又闇市の全盛期に闇生活をしてゐた朝鮮人が闇市閉鎖後町籍に入らず各地を転々としてゐる無籍者も相当居つて然も之等の無籍者と密入国者の殆んどは闇と犯罪によつて生活を維持してゐるのが其の実相であって我国経済の再建と治安回復に著しく障碍を与へてゐるのみならず密入国者に依って朝鮮本土の「コレラ」を内地に伝播しおることも事実であって之は当に聯合国軍の占領目的に反するのみではなく日本再建を阻害する原因ともなるので之が取締と密入国朝鮮人の送還は極めて緊要な施策である。幸にして米進駐軍大阪軍政部では9月5日大阪府知事宛に別添「密入国朝鮮人送還の件」指令を発せられたので当府に於ては同指令に基く送還実施計画として別添「密入国朝鮮人送還実施要領」を作成し大阪軍政部その他進駐軍当局の承認を得、又近府県とも緊密なる連絡を執って之を実施することゝなつたので各位は左記諸点に留意の上適切なる計画を樹立し之が目的達成上遺憾なきを期せられたい。

 追而 9月9日附公親第738の125号「朝鮮人密入国者の取締に関する件」は暫定的措置の通牒であつて本計画の実施によつて同通牒は当然廃止せられるものと心得られたい。

    記

一、密入国朝鮮人の送還は諸般の準備完了の時期を勘案し概ね10月上旬より実施する方針である。之が為め警察部に於ては別添実施要領に示すものゝ外次の措置を講ずるものとす
 (一)収容所の設置並に居住証明書作製の進捗状況を勘案し9月20日頃新聞ラヂオを通じ「府下在住の朝鮮人は10月1日より同15日迄の間(此の期間は未定)所轄警察署長に其の世帯主が米穀通帳又は個人金融通帳等を持参して居住証明書を受けなければならない」旨を公表すること。
 (二)前項と同時期頃に朝鮮人関係の団体責任者に対し前項の趣旨を其の所属団体員に漏れなく伝達するやう依頼し併せて本計画実施に協力方を要請すること。

二、前項の新聞、ラジオによる公表によって密入国者等においては強制送還の実施を察知し他府県に逃亡を企てる者が相当発生するものと予想されるから之を未然に阻止すると共に若し斯る者を認めた際は直ちに身柄を留置し送還の手続を為すこと。

三、朝鮮人に対する臨時戸口調査及容疑場所の一斉検索の実施に当る者は特に言動を慎み徒らにその反感を誘発することのない様留意すると共に調査検索は飽迄徹底を期し被調査者の欺罔手術に乗ぜられたり或は単に形式に流れる等のことなきやう注意し常にその実態把握に努めること。

四、居住証明書発給手続の際又は臨時戸口調査一斉検索の実施に当りては特に男力(ママ)中青壮年層の調査に重点を置き犯罪の常習的傾向のあるもの又は不良分子にして将来警察取締上注意を要する人物の発見に努め其の性行経暦(ママ)特徴其の他参考となるべき事項を明確ならしめて置くこと。

五、密入国者(無籍者を含む)を臨時収容所に送致するに当つてその員数が1回20名を越へる場合は警察部より「トラツク」を差向ける予定につき事前に連絡すること

六、管内に多数の朝鮮人が居住し居住証明書発給事務が一時に輻輳するものと認められる警察署に対しては臨時応援警察官を派遣する予定であるかつ該当の警察署に於ては予め公安課と打合せを為すこと。




*第三項の上に第四項を書いた紙が貼付されている。


綿貫響「密航者に加えて、朝鮮に引揚げようと帰国証明書を持って出発した朝鮮人労務者が帰国せず内地に潜入して各地を浮浪したりってあるわね」

神楽「『居住証明書』って何なんだ?」

上原都「それは次回以降で触れるはずだから置いといて。続いて収容と送還の実施要領よ」

密入国朝鮮人送還実施要領

一、方針
 昭和21年9月5日附大阪府軍政部より大阪府知事宛発せられた「密入国朝鮮人送還の件」指令に基き密入国朝鮮人の送還を本要領に依り実施する
無籍者は事実上密入国者との判別困難であるから密入国者と看做し之を同一の取扱とする

二、実施要領
(一)密入国者の調査
 A居住証明書の発給
  所轄警察署長は管内に居住する全朝鮮人に対し密入国の事実を調査し密入国者でないことを確認した者に対しては居住証明書を発給して大阪府下に於ける居住を認め密入国者に対しては直に送還の手続を採ること
  (註 居住証明書は概ね10月1日より発給し得る様目下警察部に於て準備中である)
 B所轄警察署に於ては管下一斉に朝鮮人の臨時戸口調査及び容疑場所の一斉検索を実施し密入国者の発見に努めること
  (註 本項は概ね10月1日より実施し得る様予め計画して置くこと)
 C町会又は隣組等の役員に対し朝鮮人の密入国者あることを察知した時は直に所轄警察署長に連絡する様協力を要請し該当者の発見に努めること
  (註 本項は概ね10月1日より連絡を開始し得るやう予め計画して置くこと)
 D司法当局(検事局及刑務所)と連絡を採り処刑者中密入国者あるときは速に警察部(公安課)に通知を受けること

(二)密入国者の収容
 A臨時収容所の設置
  大阪市内に臨時収容所を設置して密入国者を収容すること
  (註 臨時収容所は本月末日迄に設置することを目途として目下選定中である)
 B収容方法
  (1)警察署に於て密入国者を発見したときは速に身柄を収容所に送致すること
  (2)司法当局より密入国者の通知を受けたるときは速に其の身柄を受取り収容所に送致すること
  (3)町会又は隣組役員等から密入国者のあることの連絡を受けた警察署に於ては該当者を引致し其の身柄を収容所に送致すること
  (註 警察署に於て身柄を臨時収容所に送致するときは其の都度別添第4号様式の身柄送致書を収容所警備責任者及公安課長宛送付すること
 C収容所の管理並に警備
  (1)収容所は大阪府教育民生部(援護課)に於て管理し管理責任者を常時派遣すること
  (2)収容所には警察部直轄の警備派出所を設け常時必要数の警察官を配置し事故の防止に当らしめること尚収容所の警備に付ては第25師憲兵隊の協力を要請すること
 D収容者に対する給与
  収容者に対する食糧其の他給与に関しては管理責任者に於て処理すること
 E収容状況報告
  収容所警備責任者は毎日の収容状況を其の翌日一定の様式に依つて警察部長に報告すること
  (註 収容状況報告は第5号様式によること尚警察部長は毎週月曜日に前週中の収容状況を同様式によつて大阪府軍政部及第25師憲兵隊司令部宛報告すること)

(三)送還の実施
 A送還命令書の交付
  収容者に対し警察部長は送還期日を指定した送還命令書を交付すること
  (註 送還命令書は第3号様式に依ること)
  右送還命令書は無賃乗車証に換へるものとす
 B送還の方法
  指定期日に送還者を大阪駅より乗車せしめ計画輸送の列車を以て佐世保迄送還すること
 C送還列車の警備
  送還列車の警備に付ては計画輸送に準ずること
  (註 送還列車には適当数の警察官を添乗させ尚第25師憲兵隊の協力を要請するものとす)
 D送還輸送中の給与並に携帯品
  送還輸送中の食糧其の他の給与に就ては教育民生部(援護課)に於て処理すること
  身廻品其の他携帯品は計画輸送の制限に準拠し措置すること
  (註 500ポンド以内)

(四)軍政部への報告
  警察部に於ては毎週月曜日に前週中の送還状況を大阪軍政部宛報告すること
  (註 報告書は第7号様式によること尚第25師憲兵隊司令部へも同様式によって報告すること)









上原都「収容や送還に関する報告様式、居住証明書の書類様式は画像を省略するわね。あと居住証明書の発給手続についての記述は次回に触れるわ」

綿貫響「携行品の制限500ポンドは計画送還の制限量と同じね」

神楽「計画送還の列車に同乗させるんだな」

上原都「ええ。それで具体的な予算要求についての査定が10月に出たんだけど、以下のとおりよ」

昭和21年度歳出経常部警察費予算追加に関する件(密入国朝鮮人送還警備費)

知事(印)
  内務部長    議事課長   主担(印)
   伺
  予算追加要求査定
 本案査定御決裁後は次回参事会に提案附議して差支へありませんか
  件名 密入国朝鮮人送還警備費   課 主担者 小■警部補
                     電話庁内 警察 28番
  一金728,546 円  警察課要求額
  一金588,546 円  議事課査定額

  右充当財源 国庫下渡金  353,127円
        繰越金    235,419円
摘要 主務課要求額 議事課査定額 査定意見
警察費  
一、旅費 238,500 238,500 同意
二、船車借入費 240,000 200,000 1ヶ月60台のトラックを50台とす
三、雑費 37,146 37,146  
四、印刷費 13,100 13,100  
五、連絡費 200,000 200,000
100,000
部長査定に依る


綿貫響「警察課の要求額は728,546円だけど、議事課の査定は588,546円ってことね」

上原都「そうね。じゃ警察課の要求額の内訳を見てみましょう」

 昭和21年10月3日
           警察部長
内務部長殿

  昭和21年度歳出経常部警察費予算追加に関する件

一金七拾弐萬八阡五百四拾六円也
但密入国朝鮮人送還警備費
最近朝鮮に於ては治安悪化食糧不安其の他の事情の為め密航する者急激に増大之に伴ひ種々の伝染病を随伴し且つ潜入者は一定の職がない為め闇商人として経済を攪乱し諸般の犯罪亦漸次兇暴の兆を呈し治安保持上寒心に堪えぬ状態であるので密入国或は無籍朝鮮人の強制送還は国内治安維持上警察焦眉の急務なるものがあります。
然る処9月5日大阪軍政部より別紙写の通り知事宛強制送還命令がありましたので別添計画書に基き10月1日より4ヶ月の間に於て約4千名の密航無籍朝鮮人を送還する事となり之に随伴する諸経費は既定予算を以てしては到底経理困難でありますので昭和21年度追加予算として御提案下さるようご紹介致します

    内訳
(一)旅費         238,300円
   要送還朝鮮人   4,000名
  (1)護送警察官  延400名  (a)502円
     鮮人10名に対し警察官1名の割合
     大阪佐世保間往復3泊4日1人502円
     此金      200,800円
  (2)事務連絡旅費
     1人250円延150人分打切旅費
     此金       37,500円

              240,000
(二)船車借入費      200,000円
                 60
  (1)鮮人護送用トラック1ヶ月50台
     1台使用時間5時間として1時間100円
              120,000
     4ヶ月分 此金  100,000円
                 60
  (2)警備用トラック  1ヶ月50台
     1台使用時間5時間として1時間100円
              120,000
     4ヶ月分 此金  100,000円

(三)雑費         37,146円
  (1)護送警察官用主食購入費 14,196円
   (イ)護送警察官1旅程 1.4キロ宛400人分
   (ロ)収容所警備警察官 1日200名
      延120回として延24,000名分
      所要量 7,280キロ a1円95銭
  (2)護送警察官用副食購入費  3,000円
     缶詰1/2ポンド1人3缶宛a2円50銭
     所要量 1,200個
  (3)新聞広告料       12,000円
     大朝、大毎、大阪時事、大阪新聞、大阪日日
     各1回分
  (4)掲示板其他調整費     3,450円
     桟料共  50ヶ a(69■)
  (5)雑件費          4,500円 (外部■■借入諸費)

 四 印刷費        13,100円
  (1)居住証明書 100,000枚 a6銭1厘
     此金      6,100円
  (2)警告文   100,000枚 a7銭
     此金      7,000円

 五 連絡費       200,000円
  (1)25師憲兵1列車警乗
     将校1、下士1、兵3、
     之に対する慰労費として
     将校1,000円、下士800円、兵500円
     計3,300円の40回分
  (2)第25師司令部同憲兵隊及軍政部との連絡費として此金 68,000円





綿貫響「護送は送還朝鮮人10人につき警官1人の割合で、往復の列車内で1泊ずつ、佐世保で1泊の3泊4日の出張になるのね」

白鳥鈴音「『鮮人護送用トラック』ってどこで使うのかな?」

上原都「あとでも出てくるんだけど、大阪府下の各警察の留置所に収容されている朝鮮人密航者を一ヶ所の収容所に輸送する際に使うの」

綿貫響「護送警官の食費は雑費になるの?なんだか不思議な費目区分ね」

神楽「連合軍の憲兵にも手当を払うのか。それにして憲兵隊・軍政部との連絡費が68,000円って多くないかぁ?」

上原都「だから内務部長の査定で半額に削られているのかもね」

綿貫響「これで密航朝鮮人の捜査・送還についてはわかったけど、逮捕した朝鮮人はどこに収容するの?さっき上原さんはトラックで一箇所に集めるって言ったけど、それはどこなの?」

上原都「そうね。逮捕された朝鮮人を送還までの間収容しておく収容所だけど、それについては次回にするわ」

白鳥鈴音「悪辣な日帝の収容所だから、とっても楽しみだね♪」

神楽「おいおい…っと、今回まで使用した史料の一覧は
こっちだぜ」

上原都「どうにか全体像は見えてきたようね」


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